真っ白な
多角形の部屋。
高い天井。
そこには
私が以前見た裸像ではなく
純白の
卵のような覆いに
私の彫刻は包まれていて
息を飲む程
美しかった。
それらが
至宝と世界中から
もてはやされてきたのは
当たり前で
ごく自然なコトだった。
「早く『彼』が目覚めて
アンタなんかじゃなく
創るべき作品を
創って欲しいもんだよ」
撮影クルーの罵詈雑言が
アタマを駆け巡る。
こんな作品達を
目の当たりにしてしまったら
もっともな意見だったのだと
痛感せずにはいられなかった。
「…バカだ…私」
「ヒメ…」
私はジュンニイに
彫刻の前へと連れ出される。
「ちゃんと彫刻を
見てあげてよ」
意識的に見るのを
避けていたワケでは
なかったけど
とてもじゃないけど
直視なんて
出来るワケがなかった。
いくら芸術作品とはいえ
自分のリアルなヌードだ。
「…うん。キレイだね」
適当に答えた。
「モデルのココロ
ここにあらずといった
カンジだよな」
ジュンニイのコトバに
蒼くなる。
「ちゃんと…見たよ」
「今のヒメのコトじゃなくて
彫刻の話」
ジュンニイが苦笑する。
「モデルから心理的距離を
置かれてしまっているコトを
作者自身がどれ程
感じていたのか
痛感させられるよ」
背中をジュンニイに
ぽんぽんと叩かれて
彫刻の台座の上の部分に
目をやった。