知らなければよかった
気がついたら
私はジュンニイの為すがまま
お人形さんのように
キレイに着つけられていて。
ジュンニイの車の中
私もジュンニイも
押し黙ったまま
『彼』のいるホテルに
むかった。
ホテルで
ミスターの秘書の
アンナさんに迎えられる。
「ちょっと急な
お客さまがいらしたから」
ジュンニイとふたり
待たされた。
VIP専用の
ティーラウンジ。
何か凄く懐かしかった。
「何か食べる?」
ジュンニイが重い口を開く。
「ハーブティー」
メニューも見ずに答えた。
「ハーブティーって
何のハーブ?」
窓の外ばかり見ていた
私との会話を
ジュンニイが
繋げようとしているって
気がついてはいたけれど。
「知らない」
冷たく突き放してしまう。
「こちらのお客さまの
ご希望は
2番目の
ローズ系のブレンドでは
ないでしょうか?」
ホテルマンの声に
思わず顔を上げた。
「当ホテルの
オリジナルクッキーと
よくあうと思います」
「じゃそのハーブティーと
ブレンドをホットで」
ジュンニイの注文を受けて
ホテルマンが私の視線に
笑顔で応えてくれた。
…まだ覚えててくれてる。
「何、ホテルマンに
愛想ふりまいてるんだよ」
「え?」