「…あんな過剰演出を
しておいてよく言うわ」
アンナさんが睨みつける。
「『彼』が伝えたい相手に
本当に伝えたいコトを
相手にもわかるように
演出という手段で
翻訳しただけです。
他意はありません」
自分の演出と
作品の良し悪しは
カンケイないと
ジュンニイは言いきった。
『彼』の評価を
決めるのはひとりひとり。
何者にも強制される
モノではない。
そのヒトが素晴らしいと
感じれば
それが本当で
それが全てなのだと。
「あなた自身が
『彼』の作品を
卑下されるのであれば
あなたにとって
『彼』の作品は
価値のないモノ。
シンプルな話です」
ジュンニイの言い方は
あまりにもストレートで
厳しかったけれど
その場にいたみんなが黙って
聞き入ってしまっていた。
「そう。…そうよね」
アンナさんの瞳が
みるみる潤んできて。
「…辛かった。
『彼』の彫刻への
不当評価も。
弱っていく
『彼』を見るのも。
耐えられなかった」
過剰演出なんて
アーティストにとって
屈辱でしかない。
「『彼』の作品を
生き方までを
侮辱されているようで…」
アンナさんが
そのまま泣き崩れた。