腰をおろした
ソファーもふかふかで

ソファーの中で
溺れそうになる。


「オーナーが
来たときだけね。

特別仕様のソファーなの」


年寄りはうるさくってと
アンナさんの
軽口が止まらない。


嫌悪を覚える
ホテル王の『彼』への行為に

みんなが自分の無力さを
責めていた。


「おまえ、こんなトコロに
そんなモノもってきてたのか」

ジュンニイの声に振りむくと


ジュンジュンが
テーブルの上で
綺麗な紙を
正方形に切り分けている。

「アニキがフランスで
買ってきてくれた紙
なかなかいい感じだよ〜。

さすが職人が
作った紙は違うよね」


「そんなにちいさく
切っちゃうんなら

折り紙でも
よかったんじゃないの?」


「刃物で切っちゃうと
切り口が鋭すぎるんだよね」


そう言いながら

せっせと線をつけては
手で切り離していた。


「和紙のが安全だけど
折り心地が
イマイチみたいなんだ」


フランス製の紙。

ジュンニイにねだってた
フランス土産の正体。


「忘れたらコロス」って

チョコを買いに行った日

ジュンジュンが国際電話で
念を押していた。


「何に使うんだ?」
「あれ」

ジュンジュンが
指し示したそこには

たくさんの折り鶴が
箱から溢れていて。


「…おまえ

千羽鶴なんか
折ってんのか」


「違うよ。
私じゃないよ」


そんなふたりの
やり取りに割り込むように


「Please enter」

ミスターが奥の部屋から
顔を出して


手招きしてきて。


『彼』との
ひさびさの再会だった。