「何をさせても器用だな。
驚いたよ」


「上手も言うんだ?」

『彼』が笑った。


「天才の名を欲しいままに
しておいてよく言うな」


「天才?
自分を売り込む天才?

それとも
カラダを売る天才?」


『彼』の自虐的なセリフに

「見たんでしょ、キスマーク」
「……」

あのジュンニイが
コトバに詰まっている。


「陰でみんなが俺のコト
何てウワサしてるか
知ってるよ」


『彼』の手が
何かを探し出す。

ジュンニイが察知して

『彼』の手を取って
ヒザから滑り落ちていた
折り紙を渡した。


「どうも」

目が見えないんだなって
今頃思い出すくらい

瞳を閉じ続けて話している
『彼』はナチュラルで。


長いまつげが
その顔だちの良さを
より強調させている。


学校では長い前髪で
その瞳ごとキレイな顔を
隠していたけれど

目が見えてたときは
ひた隠しにして

見えなくなったら
出しているなんて


その姿はまさに

「お人形さん」だった。


反抗する術もなく
この状況をただ達観して

受け入れるしかない現実。


「自分の絵なんか
評価にも値しないモノだって

自分でもそう思ってたから」


折り鶴を折りながら
『彼』が話し続ける。


「全ての価値観が
ひっくり返される日が来る」

そんな悪夢に
悩まされ続けてたと

『彼』はジュンニイに
さらりと白状した。