…ずっと隠してきた
コンプレックス。


『彼』ってこんなに
饒舌だったっけ。


いつも何を話しかけても
「はあ」とか「さあ」が
基本で。


たまに何か
話し出したかと思っても

結局は私の方が
たくさんしゃべっていて。


ジュンニイは
ベッドサイドに立ったまま

黙って『彼』の話に
耳を傾けている。

相槌を打たない相手に

延々と心情を
打ち明け続けてるのって

不安じゃ
ないのだろうか。


「駄作と呼ばれるのは
覚悟の上だった」

なのに
ここまで作品の良さを
ひきだしてくれたコト

凄く感謝してる。


「ずっと直接会って
お礼が言いたかった」


あの自分勝手な
俺様キャラが素直に
自分をさらけだしてる。


何だろう。
この違和感は。

いったい何が『彼』を
こんな風にしてしまって
いるのだろう。


『彼』のか細い指が
私の不安を煽る。


嫌な予感を私は必死で
打ち消した。

「…個展を
見てもないくせに
よくいうな」

ジュンニイが
やっと口を開く。


「わかるよ。

だってさ

いつも俺の作品に偉そうに
ダメ出しばっかしてきた
あのボブが

手放しで
褒め称えてるんだよ?」


ありえないよね、と
苦笑いした。


「ボブからあなたに
個展の仕事を依頼したって
話を聞いたときは

正直頼むから
やめてくれって思った」