ミスターに
退出するよう促され

みんな慌ただしく
ドアの外に出された。


風邪で吐いたくらいで
みんな大袈裟に
騒ぎすぎだよ。


この場におよんでもまだ

アタマの中に浮かんだ
最悪の想定を

私は必死で
打ち消けそうとしていた。


コレは
風邪の症状で

食べてないから
痩せているだけで


「アイツに
俺を産んで貰ってよ」


それは『彼』流の
ジョークで。

からかっているだけで…。


「風邪なんでしょ?
たいしたコトないんだよね?」


私の肩を抱きかかえてる
ジュンニイに
一生懸命笑いかける。


なのに

ジュンニイは
顔をそむけたまま

答えようとはしなかった。


「病気が…進行してるって
コトなんでしょう…?」


そう口を開いた
ジュンジュンの目から
みるみる涙が溢れ出して


私の希望的観測は

その涙にあっけなく
一刀両断される。


「アタマにできた腫瘍が
視神経を圧迫して
目を見えなくしているの」

アンナさんが説明をする。


「だったら…!

手術して
腫瘍を取っちゃえば
見えるようになるんじゃ…」


食らいつくジュンジュンを
ジュンニイが抱きとめる。


「…腫瘍のある位置と
状態が悪くてね。

手の施しようがないんだ」


それはちいさな
力ない声で。


ジュンニイが私の前で

本当のコトを口にした。


「進行するのを
待ってるだけ…」

「…そういうコトだ」


「『彼』はそのコトを…?」

「アメリカの医者は
そういう告知を
本人にもするからね」


「…そんなの!!!!!!」


ジュンニイのコトバに

ジュンジュンが
その場にうずくまって
アタマを抱えた。


声をあげるコトもできず
その身をただ震わせている。