「少し様子を見てみましょう」

そう言い残して
ドクターが部屋を後にする。


ちいさくなっている
親友の背中をさすりながら


何故か冷静な自分に気づく。


自分達を傍観している
もうひとりの私。


これは

きっと夢なんだ。


だって

こんな悲劇あるワケが
ないじゃない。


どこまでも
リアルな夢からまだ
私は覚めずにいる。

そうに違いないのだ。


早く目を覚まさなくっちゃ。

こんな夢
早くリセットしなくっちゃ。


お願いだから

誰か私を起こして…!!!!!


もがいても
もがいても

私は夢から覚めずにいる。


「もう、大丈夫だから」

ジュンジュンが
背中をさすっていた
私の手を握り返してくる。


その手の冷たさが
あまりにもリアル過ぎて

神様が私に

これは現実だと迫る。


看護師さんと
着替えを用意する
ジュンジュンを

目で追いながら


私は動けない。


開けっぱなしのドア。


隣りの部屋から
ジュンジュンと
『彼』の会話が

漏れ聞こえてくる。