「ちいさい頃さあ。
ジュナと同じ名前の
オンナノコに
同じように世話焼いて貰ったの
思い出したよ」
母親に見捨てられた
現実を忘れたくって
「あの頃のコトは
極力、思い出さないように
してたけど」
本当はあの頃の自分が
一番しあわせ
だったのかもしれないと
『彼』は言った。
「ジュナはあのコに
どこか似てる。
名前が同じだと
似たりするのかな」
『彼』の世話を焼きながら
ジュンジュンの顔は
涙で紅潮している。
『彼』の記憶の中には
ちいさなオンナノコの
やさしい記憶が
もうひとつ
ちゃんと残っていて。
よかったね。
ジュンジュン。
夢の中のハズなのに
私は貰い泣きなんか
している。
「…ねえ。ジュンイチさんは
もう帰っちゃったのかな」
ひとつ伝え忘れてたコトが
あるんだけど、と
『彼』が悔やんだ。
ジュンニイのコトを
「ジュンイチさん」
と呼ぶ『彼』。
『彼』がジュンニイを
リスペクトしてるのは
私にもわかった。
『彼』はまさに
私をジュンニイに託して
ジュンニイは私を
託されて。
そんなコト夢にも思わず
その愛を疑って
嘆いて…。
私は
何て愚かだったんだろう。