「実はさ。さっき突然
このホテルのオーナーが
姿を現してさ」
『彼』と面会中なのだという。
世界のホテル王。
屈指のお金持ち。
そんなヒトが面会するんじゃ
後回しされても仕方がない。
むしろ当然だった。
確か
「『彼』のパトロンだって…」
私のセリフに
ジュンジュンの表情が
強張った。
「…ヒメでも
そんなコトバ知ってたんだ」
え?
パトロンって
「芸術家なんかを
経済的に支援して
後ろ盾となってくれるヒト
のコトでしょ?」
私の説明に
ジュンジュンが苦笑いする。
「ま、それも当たってるわな」
「それもって?」
勿体つけた
その意味深な言い方に
私は少し身構えた。
「『彼』の場合は
肉体関係のある相手の
生活の面倒をみるヒト
ってのが
より当てはまってるかな」
…それって。
「芸術に関係なく
『彼』を愛してるジイサン」
ネットで見た
オジサマ達に囲まれている
『彼』の写真が
私のアタマを駆け巡った。
「う…そ」
心臓が爆発しそうだ。
ジュンジュンは
コトもなげにさらりと
言っているけれど
好きなオトコが
同性と
カラダのカンケイを
持っているんだよ!?
しかも今
そこで密会してて…!
どうしてそんなに
平然としてられるんだ…!!
カラダの震えが止まらない。