「ショウガもとろみ系も
大丈夫みたいだね」
「…でも
あんまり食欲ないのかな」
どれもかなり残していて。
最近はお粥とかスープとか
流動食系ばっかりで。
「風邪、長いんだ」
「うん。そうだね。
吐き気とめまいが
特に辛そうだよ」
「風邪とか
ひいたコトないから
カラダが治し方
わかんないのかもね」
「そんなバカな」って
ふたりでウケたけど。
笑い話になんか
全然なってなかったんだって
思い知らされる
コトになろうとは
このときの私達は
夢にも思わなかった。
「ずいぶん時間
食っちゃったね」
「アニキ
また機嫌悪くなってないかな」
ジュンジュンとふたり
ジュンニイの背後から
様子を窺うように
そっと近づいた。
ジュンニイが私達の気配に
気づきもせず
誰かと話し込んでいる。
「アンナさんだ」
ミスターの秘書の
アンナさんは厳しい顔で。
「『彼』が
ローティーンの頃から
続いてるカンケイ。
もういいオジイチャン
なんだけどね」
漏れ聞こえてくる
アンナさんの声に
私達は顔を見合わせて
思わず衝立に身を隠した。
「たかが
才能があるからって
こんな超のつく
一流ホテルの特別室に
描けなくなった画家を
住まわせ続けるワケが
ないでしょ」
アンナさんの独白に
ジュンニイの眉間に
シワが寄る。