アンナさんが
身を乗り出して
私の顔を触る。
「キレイな肌ね。
『彼』やあなたが
夢中になるの
わかる気がするわ」
「……」
何が言いたいんだろう。
「このコが『彼』の
最初で最後の
女性経験の相手
というコトに
なるんでしょうけど。
『彼』もしあわせなコね」
ジュンニイの前で
これ以上ないくらい
辱められて
顔を上げられない。
「俺の自慢の婚約者ですから」
ジュンニイに
力強く手を握られ
ハッとした。
ジュンニイは繋いだ手を
アンナさんに
見せつけるようにして
自分のヒザの上で
私の手を
その両の手で包み込む。
ジュンニイはアンナさんを
まっすぐに見た。
「さっきから聞いてれば
あなたは『彼』を
理解してるフリをして
『彼』のコトを
何もわかっちゃいない」
ジュンニイの口調は
静かではあったけど
その深い声のトーンに
アンナさんの瞳が泳いだ。
「ひとりの金持ちの
心持ちや気まぐれで
評価が決まるほど
この世界は甘くない」
素晴らしい作品は評価され
実力のないモノは
淘汰されていく。
そして
「『彼』の絵は
長い間ずっと評価され
支持され続けている」
ジュンニイは
力強く言い切った。