『彼』は私を
ジュンニイに託して

ジュンニイは
『彼』に私を託されて。


「私に選択する余地もなく?
勝手にふたりで話し合って?」

「うん」

「私の気持ちは?」

「…ごめん」

「私がこの先
ジュンニイや『彼』よりも

素敵なヒトと出逢うかもって
思わなかった?」


「……」

「ジュンニイよりも
もっともっと素敵なヒト…」


ジュンニイが
ハンドルを急に切って

車を乱暴に停車させる。


「…あのな」

勘弁してくれよって
そんな表情が
私の胸にささった。


「俺よりおまえを
しあわせにするオトコなんて
この世に存在なんかしない!」


ジュンニイは
自分のシートベルトを外して

私の背もたれに
その長い腕をかけ

私の顔を覗き込んでくる。


目を合わせるのが
恐かった。

これ以上
私はジュンニイに

何を言わせようと
しているのだろう。

「…私に
しあわせになる権利なんか」


そんなコトを望むコト自体
間違っている気がする。


「……」

ジュンニイの手が
私のシートベルトを外した。


好きにしろって意味なのか。


ジュンニイはそのまま黙って
ハンドルの上に
突っ伏している。


車を降りようと
私はドアに手をかける。

その瞬間
チャイルドロックがかかって

開かないドアを

私はガチャガチャ
押しまくった。


「…もういいから!!」