卒業式。

制服のみんなに会えるのは
今日が最後。


たいして
思い入れがあった学校じゃ
なかったけれど

いろんなコトがあった
高校3年生だった。


まだ受験が残っている
クラスメイトもたくさんいて

間引かれた席が
何だか哀切を感じる。


空席のひとつには
退学したハズの『彼』の席も
用意されていて

いないヒトが特別表彰なんか
されてるあたり

すごく滑稽で。


なのに
ジュンジュンが泣いている。


粛々と面白みもなく
当たり障りのない
式だったハズなのに。


蛍の光に別れをせかされて

私まで
貰い泣きしてしまう。


講堂から音楽室が見える。


『彼』との思い出は
数少なかったけれど

どれもこれも
インパクトのある
モノばかりで

…忘れられない。


『彼』の
私に注がれ続けていた
切ない視線に

もっと早くに気づいていれば

私達のカンケイも
違ったモノに
なっていたのかな。


「……」

考えても
しかたがないコトなのに

バカだよね。


春だというのに

身を切るような
寒い風が吹き抜けて


涙を凍らせる。



在校生の歌に送られて

後輩が作ってくれた
花道をくぐって

校門を出る。


ママとパパの隣りには
ジュンニイがいて。


「来てくれてたんだ」

びっくりした。


忙しいジュンニイが
来てくれたのはもちろん

パパが卒業式とか
学校行事に来てくれたのって

いつ以来だろうか。


「みんなでゴハン
食べに行こう」


ジュンニイの誘いに

思わずジュンジュンと
顔を見合わせた。