「ほら、オヤジも」
ジュンニイに促されて
卒業生より号泣している
ジュンジュンのオヤジさんも
涙を拭き拭きこちらに
近づいてきた。
あははは。
思わずこっちの涙が
引っこんでしまう。
ジュンニイの車に
パパとママと私と
ジュンジュンが乗って
オヤジさんは
でっかいバイクで
それぞれ移動する。
ジュンニイが手配していた
洒落た創作フレンチのお店。
卒業式のどさくさに紛れて
何か両家の顔合わせっぽい…。
見慣れた顔ばかりなのに
全員揃うと
妙な緊張感があって
思わず笑ってしまった。
「今日は大安吉日ってコトで」
パパが私の前に
紙とペンを差し出してきて
「うっそおおおおお!!!」
紙を覗き込んできた
ジュンジュンが
驚嘆の声をあげる。
「…婚姻届」
「書類は全部
ヒメのご両親が
揃えてくれたから」
ジュンニイが
笑顔で説明する。
見届け人の欄には
ペイさんとマユコさんの
サインがしてあって。
後は私の名前を書き入れれば
空欄が全て埋まるように
なっていた。
しかも
「…本当に
ウチの姓を名乗るんだ」
「当然だ!」
パパとジュンニイが
息もぴったりハモってる。
「しかたあるまい」
オヤジさんが笑った。
「早くサイン
しちゃいなさいよ」
ジュンジュンが
面白がって私を急かす。
「…だって」
結婚…って。
私の手元に
みんなの視線が集中して
思わず緊張に震えてしまう。
本当に?
いいんだろうか。
「どうしたの?」
「名前、忘れたか?」
「ヒメ!?」
「ヒメちゃん?」
みんなの声が
プレッシャーになる。
「間違ってもハートは
書き込むなよ」
ジュンニイが後ろから
私の両頬をびよ〜んと
伸ばした。
「はい、ココだよ」
ジュンニイは右手の中指で
空欄をトントンと
叩いてみせて
私の左手の上に
おおきな手をかぶせてきた。
ジュンニイの左手に
ペアリングを見つけて
鼓動が速くなる。
「私…。私は…!」