「どうしたの?」

「早く書きなさい!」

パパとママが
躊躇している私の様子に

本気で
心配を始めた。


ここで結婚はできない
なんて言ったら

パパとママの期待を
裏切ってしまうコトに
なるんだろうか。


「ゆっくりでいいから」

そう言って

私のアタマを
撫でてくれている
ジュンニイに

恥をかかせるコトに
なってしまうんだろうか。


ポタ、ポタン。

あまりのプレッシャーに
涙がこぼれ落ちてきて

婚姻届が涙でどんどん
傷んでいく。


「サインする前から
感極まってどうすんのよ」

私の顔を子供のように
ジュンジュンが
覗きこんでくる。


親友のフォロー。

その目には涙が
いっぱい溜まっていて


「サインしなさいよ。

それがみんなの望みで

みんなを
しあわせにするんだから」


本当に?

本当にそうなんだろうか。


「しあわせになろう」

ジュンニイが
私の耳元で囁いた。


ジュンニイの甘い香りに
抱かれながら

自分の名前を
ひと文字ひと文字
丁寧に書き入れていく。


「ご成婚
おめでとうございます!」


最後の一文字を
書き上げた瞬間

お店のヒト達が
一斉に出てきて

シャンパンとクラッカーを
派手に鳴らした。


乾杯もそこそこに

パパが婚姻届を出してくると
大喜びで店を
出ていこうとする。


「…パパ、待って!」

「すぐ戻ってくるから」

私の戸惑いなど
気づきもせずに

パパは店のドアを開ける。


「待ってって
言ってるでしょおッ!!」


私の咆哮に

みんな固まった。