「…ズルイよ。こんなの」

「うん」

「私がジュンニイに
恥をかかせられないって
わかってて…」

「悪いとは思ってないから」


ジュンニイは私の顔を
下からまっすぐに
見つめてくる。


「言っただろう?
ヒメのしあわせは
俺が考えるって」


力強いコトバとは反対に

ジュンニイが遠慮がちに
唇を近づけてきて

軽く唇が触れただけなのに
酷いコトでもされたように

涙が堰を切る。


目を閉じたら真っ暗で。

手探りして
ジュンニイの肩に触れる。


手が届くトコロにある
このしあわせを
ただ重荷に感じながら

私は生きていくのだろうか。


「しあわせにするから」


そう言って
抱きしめてくれる
ジュンニイの腕に
しがみついて

私は泣くコトしか
出来なかった。


どちらともなく
唇を求めて

何度も何度も
くちづけする。


そこにある
ぬくもりだけが

真実であり

現実だと


信じたかったから。


それぞれの家族を
家に送って

ジュンニイとふたり
車でマンションに
むかった。


ヒザの上には
ママが持たせてくれた
着替えが一式。

あまりの用意周到さに
ちょっと呆れてしまう。


私が学校に行った後
荷物の配送も手配済みで

もし結婚が取りやめに
なってたら
タイヘンなコトになっていた。