マンションに着いて。

地下の駐車場から

そのまま部屋まで
エレベーターで上がるのかと
思ったら

「ちょっと見てってよ」

ジュンニイが
私を正面玄関に連れ出した。

「あ」

ポストの名前が
ヒメミヤになっていて

その下に
ジュンニイの旧姓が
カッコの中にちんまりと

居心地悪そうに
自己主張していて


何だか気の毒になった。



「私の尻にジュンニイが
敷かれてるみたい…」


私の素直な感想に
ジュンニイが鬼ウケする。


「だからヒメはかわいい!」


私に抱きついて
キス攻めにした。


「あん、もお!
こんなトコロで!」


制服姿のオンナノコと
こんなコトしているのを

ご近所のヒトに
見られでもしたら…。


誰かの強い視線を感じる。

あれ?


視線の方に目をやって
心臓が止まるくらい驚いた。


『彼』の…!!

「お母さんッ!!!!!」


どうしてそんなトコロに!!


私と目が合ったのを確認して

お母さんは
ガラスドアのむこうから

郵便ポストのエリアに
飛び込んでくる。


「ご無沙汰して
おりました…!!!」


お母さんはジュンニイの前で
勢いよくアタマを下げた。


「よかった。
お会いできて。

ポストの名前が
変わっていたので
引っ越しされたのかと…」


「は、あ…」

ジュンニイはお母さんが

誰だか
わからなかったようで。


「『彼』のお母さんだよ」

耳打ちしてそっと教えた。

のに。