サヨナラ
職場で風邪が流行ってて
どうしても今日まで
休みがとれなかったという
『彼』のお母さん。
「彼女、意外と責任感あるヒト
だったんだな」
電話口でジュンニイが
いたく感心した様子をみせた。
「『彼』と明日
逢う時間つくれる?」
ジュンニイは
サラリと私に聞いてくる。
「…ジュンジュンの都合も
聞いてみなくっちゃ」
「アイツを連れてったら
かえって邪魔だろ」
ジュンニイの
意外な答えが返ってきた。
だって
「ひとりで
逢いにいってもいいの?」
心配じゃないの、かな。
「むこうにはボブ達が
ちゃんとついてるだろ?」
…それはそうなんだけど。
「妹が話に入ると
どうも緊張感が
なくなるっていうか。
アイツは
マジな交渉の場には
不むきなタイプだ」
意外な
ジュンニイの妹評価。
「だいたい前のときも
結局は逢わせるのに
失敗してるんじゃないのか?」
でもそれは
ジュンジュンのせい
じゃないし。
「アイツは昔からそうなの。
何でも行き当たりばったり。
思いつきで
強引に押しまくる」
それは
ジュンジュンの
一面でしかないよ。
父親のように接してきたから
ジュンジュンのコトは
よく知ってるんだって
どこか過信して
油断している。
「アニキには黙っててね」
「アイツがそんな風に
この傷を解釈していたなんて」
お互いがどれだけ遠慮して
本音をみせてないのか
自覚が足りない兄妹だった。
「…ねえ」
「何?」
「ジュンジュンが
『彼』のコト
好きだって知ってる?」
「えッ…!!!!!!」
私のセリフに
電話のむこうで
ジュンニイが動揺している。