「ちいさい頃の話だけど」

「ああ!!

そうだよな!!!
ちいさい頃の話ねッ。

うん!」


物凄い勢いでジュンニイが
安心してみせた。


今も燃え続けている
妹の恋心に
気づいているくせに

あくまでも打ち消さずには
いられないんだね。


都合よく鈍感になろうと
努力しているように
さえ見える。


「やっぱり心細いから
ジュンジュンに
ついていって貰う」


「…ああ」


少し間があったけど

ジュンニイはそれを了承した。


「じゃ。今夜は
遅くなるから先に寝てて」


話を切り上げて
電話を切ろうとしたのは

ジュンニイの方だったのに。


「…あのさ!

妹は、おまえと違って
思い詰めたら何するか
わかんないからさ」

「……」

「だから、その…」


言いたいコトはわかっていた。


ジュンニイはやっぱり
ジュンジュンの『彼』への
想いに気づいている。

わかっていても
認めたくない現実。


なのに

「…何を考えて
どう行動しようが

ジュンジュンの自由だし。

結果責任だってちゃんと
自分でとれる人間だよ」


ちょっと意地悪な言い方を
してしまった。


「…それは
そうなんだけど、さ」

ジュンニイが黙ってしまう。


でも、それは私の
正直な気持ちだった。


「…信じてなんて
強要はできないけど」


気まずい長い沈黙。


「…そう、だな」

ジュンニイがやっと
返事をする。


「どんな些細なコトも
ちゃんと報告するよ。

変な空気になったら
ジュンニイに
すぐSOS出すから」


「変な空気って何だそりゃあ」

電話口で大ウケして笑ってる。