でもよりにもよって
話題が結婚のコトだなんて。
何て答えるべきなのか。
「料理とか
ちゃんとしてるの?」
「……」
『彼』は私の口から
何が聞きたいんだろう。
「返事がないってコトは
苦手なんだ?
ジュンイチさん気の毒に」
「…料理は得意だもん」
「へえ!!」
『彼』が大袈裟に感心する。
「何か食べたいな」
「食欲あるんだ」
何だかそんなコトが
すごく嬉しかった。
「私、ホテルのコト
わかんないから
ジュンジュンが戻ってきたら
何かふたりで作ってあげるよ」
「アイツのショウガ湯は
もうカンベンだけど」
『彼』が舌を出して見せる。
凄く『彼』らしい
コメントではあったけど
やっぱり
その言い方にカチンときた。
「…一生懸命
ジュンジュンが作ったんだよ」
調理実習でさえ敬遠して
サボリまくってたあのコが
「一生懸命…」
「…うん。そうだな」
『彼』が素直に同意する。
それは物凄く意外で
らしくなくって
私の知っている
触れれば切れる
刃物のような『彼』とは
別人で。
私はまた
次のコトバを失っていた。
「…彼女を愛せたら
どれほど楽で
救われただろう」
『彼』の言い放ったコトバが
私の気持ちを
また揺さぶろうとしている。
「私…」
私は…。
ジュンニイから貰った
指輪を右手で握りしめて
何とか自分を保とうとした。
なのに。