私の様子を
その気配から見透かされて
しまっているようで
辛かった。
「ねえ。顔触ってもいい?」
「え…?」
思いがけない『彼』の要求に
私はココロを乱される。
「警戒しなくていいよ。
良からぬコトなんて
考えてないから」
「……」
ひとつ許したら
ズルズルといきそうな
自分が怖かった。
それに
「…触ってもいい?
なんてセリフ
全然、似合ってないから」
『彼』がくすりと
笑ってみせて
いいとはひと言も
言ってはいないのに
か細い手が
私の声がする方に伸びてきて
空を探り出す。
「ダメだよ…」
そう言いながらも
『彼』の手探りする軌道に
吸い込まれていく自分がいる。
頼りなげなその指が
私の首筋を捉え
私が近づけていったのか
『彼』がそこを
探し出そうとしていたのか。
唇が『彼』の指に触れて
私は思わず
自分の口を固く結んだ。
「笑ってみせてよ。
笑顔がいいな」
「どんな風に?」
「どんなって…」
私のセリフに
『彼』が噴き出した。