ジュンジュンとふたり
『彼』の静養するホテルに
むかう。


「実は私も
『彼』に面会するの
久し振りなんだよね」

意外な親友の告白だった。


「傍にいても
『彼』にしてあげられる
コトなんて何もなくてさ」


当たり障りのない会話をして

気まずい空気に
息が詰まって


ただただ
弱っていく『彼』を
見ているだけで。


「ふたりきりに
させられたりすると

何だか怖くなってきて」


どんどんどんどん
悪い方向に
想像が膨らんでいく。


「毎日が自己嫌悪」


たまにたくさん
しゃべってくれたかと
思っても


「自分が死んだらって
死んだ後の心配ばっかりで」


そんな哀しい
仮定の話をされても

受け入れるコトも
拒絶するコトもできなくて


「励ますコトバも
見つからないから…」


親友の目が涙で光った。


「…ジュンジュン」

「ごめ…。泣くつもりなんて」

「もう何も言わなくて
いいよ…!」

私は親友を
力いっぱい抱きしめる。


抱きしめても
抱きしめ足らない。

辛かったよね。
辛いよね。

辛すぎるよね。


好きなヒトが
死に直面しているなんて現実を
直視できる程

私達は強くはなかった。


命が永らえと祈る行為すらも
死という現実を
受け入れているような気がして


耐えられそうにはない。

これは、夢で。

きっと何かの間違いで。


「ドッキリでした〜!」

なんて『彼』が
舌を出したりして。


私達は猛烈に怒って
『彼』を責めるんだ。


「心配して損しちゃった!」


って。


そんな想像をしては

この期に及んでもまだ
現実から逃げようとしている
情けない自分に

泣き笑いする。


「…みんなが見てるよ」

「構わないよ!」


ホテルにむかう電車の中。

ふたり

泣いた。