ジュンニイのヒザの上で
黒板に描いた
自分の絵を指さして
「わんちゃん」
娘が説明を加えてる。
「角のコンビニに
いつもいる犬の絵かあ」
私には
ただの塗りつぶしにしか
見えないけど。
ジュンニイは
子どもと話を合わせるのが
本当に上手い。
なのに
「違う!!
あのワン公じゃないッ!
くるくるの毛の
わんちゃん!!」
「くるくるの毛の…」
わんちゃん…。
思わずジュンニイと
顔を見合わせた。
『彼』の個展にもあった
その題材。
だけど
「まさか、ね」
ジュンニイは
ソファーを壁にくっつけて
娘をその上に立たせた。
「壁に描いても
いいのかッ?」
娘は嬉々として
チョークで
壁に絵を描き始める。
ジュンニイとふたり
息を飲んで見守った。
リアルな
くるくるの毛のわんちゃんに。
トカゲに蛙にゴキブリに
「このモチーフも
『彼』の作品にあったよな」
ジュンニイが興奮する。
でも
「いかにも子どもが好んで
描きそうな題材だし…」
『彼』みたいに
凄くはなかった。
しかも
「…あれ?」
「もしかしてそれは…」