本当だ。
忘れたくないのに
毎日、毎日
この4年間
『彼』のコトを
思い出さない日は
なかったのに。
時間は残酷だ。
「ママ〜。腹減った〜ッ」
「もうそんな時間?」
だけど
『彼』が全身全霊で
私を
私だけを
想い続けていてくれた
コトだけは
生涯、忘れはしないから。
「お食事にしましょう。
手を洗ってらっしゃい」
「お〜」
オトコノコのような
わが娘。
「お肉もちゃんと食べなさい」
「げ〜」
ジュンジュンに
言わせると
娘の食べ物の好みは
『彼』とは
かなり違うらしい。
『彼』はちいさい頃から
ビターなチョコが
好きだったらしいけれど
この子は
甘ったるいミルクチョコを
好んで食べる。
「肉、まずういッ」
「こら。吐き出さないの!」
娘と『彼』の共通点を
探そうとしても
かつて『彼』が
何が好きで何が嫌いか
観察を続けるには
あまりにもサンプルが
少なすぎだった。
頼りの綱は
ジュンジュンの記憶だけ。
そのジュンジュンも
「…どうしてメールの返事
くれないんだろう」
真っ先にメールを入れた
ジュンジュンからは
まだ何の返事もない。
あんなにも楽しみにして
期待していた
『彼』の生まれ変わり
だったのに。
「…いろいろ
複雑だろうからな」
ジュンニイが
ジュンジュンを気遣った。