今でも
はっきり覚えている。
『彼』の臨終の場に
ジュンジュンが
『彼』の母親を連れて
部屋に戻ってきたとき
手には10円チョコの入った
袋を持っていて。
「こんなモノ探してないで
急いで連れてきて
あげればよかった…」
そう自分を責めて
ベッドの上で
変わり果てた姿に
なっていた『彼』に
近づこうともしなかった。
お母さんが『彼』の顔を
やさしく撫で続けるのを
黙って
見つめているだけで
迎えに来てくれた
ジュンニイが話しかけても
ひと言も発するコトもなく
最後まで『彼』を
遠くから見守っていた。
私は
警察署に連れていかれて
事情を聞かれ
『彼』に死が
訪れるまでの経過を
何度も何度も再生させられて
もう誰かを
気遣う余裕なんて
どこにもなくなっていて。
親友のコトが気になりつつも
フォローして
あげられなかった。
今思えば
すぐにでもユッキに連絡して
ジュンジュンのフォローを
して貰うべきだったって
猛烈に後悔が残る。
『彼』の遺体とは
それっきり対面も叶わず
その死は秘密裏に
荼毘にふされた。
別れのコトバを
かけるコトも許されず
私は『彼』に本音を語る
機会を取り上げられ
どこにもはけ口のない
この想いを
私は弄ぶしかなく。
きっとこの娘を
授からなければ
私は
私達は
立ち直れなかっただろう。
「後は『彼』に報告に行けば
私の役目は終わり」
『彼』との約束の遂行が
ジュンジュンの
生きる支えで目的で。
それを遂行して
しまった今…。
悪い予感を必死で打ち消す。