「ヒメは大丈夫?」

やわらかな
ジュンニイの声。


「…ジュンニイ…!」

もっと聴いていたかったのに


「ママ替わって〜」

娘が私から受話器を奪って

「パーパ、あのね〜」

テレビ電話の画面も出せと
騒ぎ立てる。


「パパの顔、想像してごらん」

ジュンニイは
画面を出すのを

やんわりと拒否っていて


その様子から
今、ジュンジュンが
どんな状態なのか

想像はついた。


「ジュナもいるの〜?」

「…いるよ〜♪」

ジュンジュンの声がする。


「牛買ってくるの
忘れるなよッ!」


空気を読まない
娘の言動に

電話のむこうから
笑い声が聞こえた。


『彼』が助けてくれた
『彼』が返してくれた

かけがえのない
私の親友の笑い声。


「…待ってるから。

ふたりとも早く帰ってきてね」


ホッとしたら

涙が出てきて
止まらない。


「…ありがとう」

親友を私に返してくれて
ありがとう…!


「…う」