エピソード002


選択授業は音楽を選んだ。

美術は後片付けとか
面倒くさそうだし。

運動音痴の私にとって
体育なんて論外だった。


ユッキも私とほぼ同じ理由で
音楽を選んでいたのだけれど。

意外だったのは
『彼』も音楽を
選んでいたコトで。


「絵が巧いくせに
わざわざ音楽を選択するなんて
高校美術をバカにしてるから
じゃないの〜」

ユッキは相変わらず
『彼』に対して辛口で。


「…器楽演奏とか
巧いとか?」

「どうだったっけ?」


観察眼の鋭いユッキの
記憶にも残ってないくらい

『彼』の教室内での存在感は
皆無に等しかった。


「ヒメくらい
リコーダーでぴ〜ひょろと
抜けた音出してたら

すんごく目立ってたと
思うけど」

ユッキが笑う。


「このリコーダーが
不良品なの!!」

リコーダーを振り上げたら
そのまますっぽ抜けて

ころころと転がっていって。


「あ、ごめんなさい。
ありがと…」

げ!!!!!!!

足もとに転がっていた
リコーダーを拾ったのは

ウワサの『彼』だった。


いつの間に後ろにいたんだッ!

話、どこから
聞いてたんだろおおおおお…。


「……」
「……」

き、気まずい…。


『彼』は私のリコーダーを
簡単にチェックして

その口に含む。

「ちょっと…!!!」

慌てて取り返そうとしたけど
遅かった。


『彼』の吹く
リコーダーの音が

風に乗って
教室中にやさしく響いて


「…きれいな音」

皆が思わず聞き入った。


短い演奏が終わっても

音楽室中
誰も身動きもしない。


その沈黙を破ったのは
『彼』自身で。


「…不都合なコトを
すぐ他のモノのせいに
するのな」

「!!!!!」


『彼』はリコーダーを
私の机の上に転がして
自分の席に戻っていく。


ユッキがリコーダーを
手にして

「このリコーダーは
主人を選ぶのかねえ」

無責任に笑ってて。


「…ちょっとリコーダー
洗ってくるから!!」

『彼』に聞えよがしに
私は席を立つ。


その昔
私にキスしておいて

汚いと
ぺっぺっと唾をはいていた
オトコノコ。

同一人物だったなんて
気づくハズもなく


今日もまた
ふたり傷つけあった。





エピソード002

≪〜完〜≫



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