おおきな声を出さなくちゃ!

やめてくださいって
睨まなくちゃ!


わかってはいるものの

カラダが緊張して
声がでない。


右隣りのサラリーマンの息が
耳にかかる。

前にいるオヤジも
さっきからニヤついてて
気持ち悪い。

左隣りの大学生風も
片手が下にあって。

犯人が誰だか特定できない。


スカートの中に
入ってくる手が
私をからかうように

下着の上から
私のそこを撫でつけてきて


気色悪い!!!!!!!!


悔しくて
涙があふれてきて

止まらない。


その手がどんどん
エスカレートしてきて

もうダメだと思った瞬間


誰かに手首をつかまれて


引っ張られた。


電車が止まって

私はそのまま電車から
降ろされる。


「あ…」


私の手首を掴まえていた
その男子は

私の学校の制服を着ていて。


「…ありがとう」


私を見つめたまま
手を離そうとはしなかった。


「あの?」


「…覚えて…ない?」

「え?」


「全然…?」

「は?」


私と視線を合わそうとは
しないその目が
どんどん険しくなってくる。


ぞっとするくらい
綺麗で


…冷たい瞳。


そのヒトは
野生の動物のような
攻撃的な空気を
かもし出していて


背中が凍る。


キケン!


瞬時にそう判断して

私はその手を振り払って

その場から
逃げてしまっていた。