私が廃墟での
本当のファーストキスの
記憶を取り戻したのは
私が『彼』との
このカンケイを
解消してから後のコトで。
「ファーストキスの相手
とかって覚えてる?」
親友のジュンジュンに
そのときのコトを
目撃されていたなんて
想像すらしなかった。
真っ暗な部屋。
どこから『彼』の手が
伸びてくるかわからない。
予想がつかない
『彼』の指使いが
今日も私のカラダを
赤く色づかせる。
『彼』を愛してるなんて
自覚はなかった。
けど。
カラダは正直なモノで
満員電車の中
知らないオジサンに
触られるそれとは
私の反応は
あきらかに違っていて。
「別にアナタなんか
好きなワケじゃないから」
そんなセリフを
わざわざ口にしてないと
『彼』の前
自分を見失いそうになる。
こういう関係になったのは
「脅されたから
仕方なく、で」
けっして
『彼』に惹かれたからじゃ
ないんだって
必死に自分に言い聞かせて。
「…あッ」
『彼』の行為に
感じ入りながらも
マグロみたいに
無反応を装って。
声を必死で押し殺した。
「抱きたいんなら、抱けば?」
『彼』の為すがまま。
望むまま。
「愛なんてないから」
『彼』をこれでもかって
コトバで態度で傷つけて。
それでも『彼』は
変わらず私を
愛し続けてくれていた。
小学生のときの
ファーストキス。
その日から
色あせるコトなく
『彼』は
私だけを愛して
私だけを求め続ける。