裸にした私をお湯に沈めて
長い指で水面をはじいては
私の顔にかけては
笑っている。
「ゆっくり入ってて」
そう言い残したかと思ったら
そのまま浴場を後にした。
てっきり
いっしょに入るんだろうって
身構えていたから
拍子ぬけする。
ジュンニイって
ナイーブなトコがあるから
こんな状態の私なんて
抱く気にも
なれないんだろうなって
そう思ったら
何故だか泣けてきた。
ジュンニイのコトは
大好きだし
いつも感謝している。
でも『彼』の
あんな壮絶な最期を
目の当たりにして
私は誰を愛していたのか
わからなくなって
しまっていて。
『彼』はもういないんだから
『彼』との想い出は
全てリセットして
ダンナさまであるジュンニイと
しあわせな家庭を築く努力を
するべきなんだって
アタマの中ではわかっていた。
でも
私の背中にはは
『彼』に掴まれた手の記憶が
生々しく残っていたし
「間接キスだね」
そう言って笑った『彼』の声が
アタマの中を
何度もリピートして
死んでなお
『彼』の存在が
私の全てを支配していて。
こんな奥さんで
ごめんなさいって
後ろめたい気持ちはあったから
ときどき自分から
ベッドにジュンニイを
誘ったりして
抱かれてた。
そこにココロがないって
わかってて
ジュンニイは黙って
抱いてくれてて
何かますます
自分のやってるコトに対して
自己嫌悪するばっかりで。
「大学は慣れた?」
「そこそこ」
「面白い教授とかいないの?」
「別に…」
ここに来る車の中でも
気を使って
たくさんしゃべってくれる
ジュンニイに
申し訳ないなと思いつつ
外の景色ばかり見てて。