「…何?」
皆の冷やかしの声に対抗して
ドアの外に顔だけだして
クールに対応する。
「ちょっと散歩しない?
蛍がキレイらしいよ」
「行く!!!!!」
横になってる皆にも
蛍を見に行こうって誘っても
「そんな無粋なマネ
できませ〜ん」
って。
ユッキとジュンジュンに
羽織りを着せられた。
「よろしくお願いしま〜す♪」
ジュンニイの前に
放り出されて。
中からドアに鍵を
かけられてしまう。
「…行こっか」
ジュンニイが笑顔で
私の目の前に
手を差し出してきて
「…うん」
何故だか素直に
その手を取るコトができた。
あたたかいジュンニイの手。
指をからめ合うようにして
手をつないだ。
こんなのいつ以来かな?
何だか
つきあい始めた頃を
思い出す。
「こちらです」
玄関に待機していた
宿のご主人が
私達ふたりを
中庭に案内する。
「他の宿泊客には
内緒ですよ」
ご主人が子どものように
笑ってて。
ジュンニイがご主人に
いかに気に入られて
いるのがわかった。
愛想がよくって
誰とでも仲良くなれる
この才能と社交性を
『彼』に少し
分けてあげて欲しかった。
…なんて。
私はまた
未練たらしく
『彼』の孤独な後姿を
思い出していて。
真っ暗な庭。
静かだ…。
満天の星空の下
『彼』と過ごした時間が
鮮やかに蘇ってくる。