「じゃ、賭けようか」

ジュンニイは
今ここで子どもを授かったら
それはきっと
『彼』の望み通りの
生まれ変わりで。

授からなかったら
もう二度とこの話は
持ち出さないって

ジュンニイは私に約束をした。


「…今ここで、って」


ジュンニイの手が
浴衣のすそを
手繰ってくる。


「やだッ。
誰かがきたらどうするのッ」

「私有地だから大丈夫だよ」

「宿のヒトが戻ってきたら…」

「そのときは、そのときさ」


見切り発車な
愛の行為。


暗闇の中で
声を押し殺しながら
抱かれていると

今されている行為が

ジュンニイにされているのか
『彼』にされているのか

アタマの中が混乱した。


美しい獣に
身を投げ出していた
あの恍惚の瞬間を

私のカラダは
はっきりと覚えているのだと
自覚する。


全ては夢の中


今、この一瞬だけ。


『彼』の想いを
遂げさせる為だって

また私は
自分で自分に言い訳して。


「あ、あッ…!」

ジュンニイの熱いモノが
私の中に滲みこんできた。


耳元に
首筋に
目元に

ジュンニイは繋がったままで
私に星の数ほど
キスを贈り続けている。


「…なんかコソバユイよ」


気がつくと
足もとにいっぱい蛍が
寄ってきていて。


「甘い蜜に
魅かれたんじゃないの?」

ジュンニイは
他人事のように笑ってる。


満天の星

蛍の灯


真っ暗闇の中で
ちいさな希望を
みつけては

すがろうとする
自分の姿に気づく。