まあるいおしり004


娘が音楽教室で
ヒト様に噛みついた。


「もう、この子のこの犬歯
引っこ抜いてやりたいッ!!」

「まあまあ。
この子だって反省してるよ」

パパが娘を庇い立てする。


さっきから
おじいちゃんの背中に
じゃれつきながら

「ふふ〜ん♪」ってカンジで

こっちを見てる。


「そんなにハンサムな
オトコノコだったの?」

ママが興味津々で
私に耳打ちしてくる。


私はママをキッチンの
隅に手まねきして

「ハンサムなんて
俗な表現が
似合わないくらいよ」

そのオトコノコの
美しさを力説してしまう。


ホントにキレイで
キラキラしてた。


芸能人みたいな
華やかなオーラがあって

エレベーターの
ドアが開いたとき

思わず他のママさん達も
息を飲んでたもん。


『彼』もキレイなオトコノコ
だったけど

雰囲気がまったく
正反対で。


…私ってば

何、『彼』と
比べちゃってるんだろう。


自分で自分にツッコんだ。


「でも、そのオトコノコ
そのマンションの
住人とかだと厄介よね」


ママが嫌なコトを言う。

「会う度に
やっぱり
噛みつくのかしらね」


…あり得るだけにコワイ。


「他のママさん達が
何度か見かけたコトが
あるって言ってたけど…」


何だか不安になってきた。


どうしてこの子は

顔がキレイで
若いオトコのヒトにだけ

過剰反応を見せるのか。