「ヒメはともかく
俺はジュンでいいからさ」

「皆と同じ呼び方って
なんかヤダ」

「でもジュンニイじゃ
ジュンイチにいさんの略って
なんか変じゃない?」


「ジュンイチにいさんの
略じゃなくって

ジュンジュンのおにいさんの
ジュンニイなんだけど」

「え? そうなの!?」

ジュンニイが露骨に
落ち込んだ。

「あ、冗談!
ウソだってば〜」


ご機嫌をとってみたけど

ホントは
ジュンジュンのおにいさんが
正解で。


ジュンニイがジュンイチなんて
名前だったなんて知ったのは
実は中学生になった頃で。


「ジュンニイもジュンジュンも
似たような名前で
紛らわしいよね」

「母親の初恋のヒトが
ジュンって名前だったんだって」

で、自分の息子を
ジュンって名づけて
出生届をおじいちゃんに
出してきて貰ったら

「ジュンなんて
オナゴみたいな名前だ」って

勝手に「イチ」の字を
書き加えられて
提出されたという。


「ジュナだって俺が
反対しなければ
ジュンって名前だったよ。

だいたい俺のコトも
ジュンって呼んでたのに
信じられないよな」

ジュンニイが
思い出し笑いをした。


さすがに
ジュンイチにジュンなんて
ややこしいにも程があって。


「ジュナってJYUN−Aで
ジュナっていうの知ってた?」

「知らなかった…」


でも、そう言えば

ジュンジュンって呼び名も
仲間内の誰かが考えたって
ワケじゃなくって

ジュンジュンのお母さんが
ジュンジュンのコトを
そう呼んでたからだった
ような気がする…。


「俺のコトをジュンって呼んで
妹はジュンジュンって
何かすごいウザかったけどさ」

ジュンニイが苦笑した。


「…こだわりの
名前だったんだね」

「子どもみたいな
ヒトだったからね」

「…マユコさんみたいに
からからと豪快に
笑ってたよね」

「そう?」

「マユコさんって…」

ジュンニイのお母さんに
似てる…。

って言いかけてやめた。


「マユコさんって?」

「ペイさんと引き合わせたの
ジュンニイ?」

誤魔化す。

「う〜ん。
そういうのじゃなくって。
昔からの顔見知りだったのを
再会させたってカンジかな」

「へ〜…」

「何だよ。
自分から質問してきといて
その態度は」

ジュンニイが笑いながら
抱きしめてきた。