ジュンニイとドキドキ♪
「ヒメってさ。
ちいさい頃から顔、あんまり
変わってないよね」
私の荷物の中から
古いアルバムをみつけて
大ウケしている。
「ジュンニイが
変わりすぎなんだって!」
ヒメミヤ ジュンイチ。
私が「ジュンニイ」と呼ぶ
ひとまわりも年上のダンナさま。
親友のジュンジュンの
おにいさんでもある。
ちいさいときから
顔なじみで
ジュンニイは私の小学生の頃を
よく知っていた。
「これ! 確か俺が
シャッター押したヤツ」
見て見てと
本の整理をしている私に
アルバムを叩いてみせる。
「……」
運動会のパン食い競争の
写真なんだけど
私が間違ってとなりの走者の
パンに必死でかじりつこうと
している写真で。
「ヒメったらさ〜。
全然気づかないでさ〜。
場内大爆笑だったよな〜」
ジュンニイはこういうのばっか
よく覚えている。
「…このとき
ジュンジュンもいっしょに
走ってたんだけどな」
「一等賞の妹より数段
おまえのが目立ってたからな〜」
つい目がいって
シャッターを
押してしまったのだとほざく。
運動会の翌々日。
ジュンジュンがこの写真を
学校にもってきて
くれたんだけど。
「私のゴールの瞬間は
誰も見てくれてなかったみたい」
そうつぶやいたジュンジュンの
淋しそうな顔ったら
今でも忘れられない。
「記憶力鈍いくせに
どうでもいいコトは
よく覚えてるよな〜」
ジュンニイが無責任に笑ってる。
「どうでもよくないもん」
思えば私がヒトの顔色を
窺うようになったのって
この一件がきっかけだった
気がする。
「…ヒメ」
ジュンニイの手が
私の頬を掴まえて
その親指が私の唇を往復する。