エレベーターが止まった瞬間。


ジュンニイはふたりの間に
あった雑誌を床に落として

その上に私を立たせた。


ほおおおおおおお。
間一髪。


「こりゃひどいね〜」

開いたエレベーターのドアの
むこうにいた管理人さんが
床の状態を嘆いている。

管理人さんがそっちに
意識を集中させているうちに
私達は何もなかったように
階段の方へ移動した。


「裸足だったの
気づかれなかったね」

ふたりで笑った。


「雑誌置いてきちゃったけど」
「管理人さんがなんとかして
くれるでしょう♪」


…明日でも管理人さんに
ポロー入れておかなくちゃ。


「ほら、背負ってやるから」

ジュンニイが中腰になる。


「マジ!?」
「足、冷たいだろ?」


「えへへへ」

ジュンニイのおんぶなんて
何年ぶりだろ。


「この重量級は
足腰の鍛錬には
もってこいだよな」

「そこまで重くないでしょ!」


ジュンニイのヒゲを
つまんでやった。


さっきから
足にジュンニイのベルトが
あたって痛い。


「…前をはだけたままの
オトコがエレベーターから
出てきたら本来なら警察に
通報モンだよね〜」

「俺がやるから
ファッションに見えたんだよ」
「よくゆ〜よ〜」


ジュンニイの広い背中は
何だかすごく安心できた。

やわらかく香ってくる
ジュンニイの香水と

背中のぬくもりに
しあわせを感じる。


「おまえ、ノーブラだろ?」

「え」

「そんなにしがみつかれると
背中に丸みを感じる」

「ジュンニイのスケベッッ!」


あはははははって
ジュンニイの笑い声が
階段に響いて。


「ご近所迷惑!!」


「エラソーなコト言ってる前に
おまえこそ油断せず
家の中でもいつでも
ブラはちゃんとつけとけ」

「何でよー!」

「俺の楽しみが減る」