複雑な事情から
『彼』から捨てられた
お母さん。


『彼』の描いた絵に
ひき合わせられたように
不思議な縁で知り合った。

ジュンニイが連絡先を
知っていて

何だか私の知らない間に
いろいろ連絡をとっている
みたいだった。


「お母さんは『彼』の
病気のコト知ってるの?」

「メールなんかで
打ち明けるような
内容じゃないからね」


「…まだ知らないんだ」


ふたりとも急に
無口になってしまって

その後の片付けは
異様に早く終わってしまった。


「なあ、ヒメ」
「ん?」

「今度さあ。
結婚の記念に写真館で
ちゃんとしたの
ふたりで撮りにいかないか?」

「プロのカメラマンの
前なんかでうまく笑えないよ」


「じゃ俺だけに
極上の笑顔みせて」

ジュンニイはポケットから
ケータイを取り出して
私にむける。


「はい、笑って〜♪」

私はジュンニイのコトバに
ヘン顔で応える。


「カメラマンを笑わして
ど〜する!」

鬼ウケするジュンニイの
背中に回って

「ほら、いっしょに
写ろうよ!」

ジュンニイの頬に
自分の頬をよせる。


カシャ。


「お〜、かわいく
写ってるじゃん」


当然です!


好きなヒトに甘えられる
このしあわせに勝る瞬間なんて

考えられない。


「ジュンニイ?」

「何?」

「私もジュンニイの
昔のアルバムみたいな〜」

「俺って不精だから
写真とかってあんまり
残してないんだよね〜」

「実家のベッドの下に
歴代の彼女の写真が
大量にストックしてあるって
ジュンジュンが
言ってたんだけどな〜」

「えッ…」


ジュンニイの顔色が変わる。