「ルームサービス
きちゃうから」

聞かれてもいないのに
そう言い訳して

とりあえず制服に着替える。


私のセリフに
何の反応もみせないのは
いつものコトだったけど

顔を手で覆ったまま
『彼』は身動きひとつしない。


大丈夫かな、と思いつつも

『彼』が放っていた
近づき難いオーラが
声をかけるのを戸惑わせる。


ふた間続きの隣りの部屋に
ルームサービスが
セッティングされ

お味噌汁の
食欲をそそる匂いがしても

『彼』は真っ暗な
ベッドルームから
出てこようとはしなかった。


お上品な真っ白い
シンプルなおにぎり。

具なんかなくても
いいお米といい塩で
充分だって

握ったヒトの自信が
手にとって見えるようで。


「でも、やっぱり
海苔くらいは欲しかったかなあ」

なんて

贅沢を言ってしまう私の舌は
まぎれもなく庶民仕様で。

「ねえ、おいしいよ。
食べないの?」

奥に引っ込んだままの
『彼』にひとつ手に取って
届けにいく。


「ほら」

「……」


無反応。

どっか壊れちゃったんだろうか。


「私ひとりじゃ
3つも食べきれないから」

「……」


顔を覆ったまま
壁に寄りかかるようにして
ベッドの上で固まったままで。


「ねえってば!」

私はたまらずに
部屋の電気を点けてやる!


「……」


でも、『彼』からはやっぱり
何のリアクションもなく。


あらわになった
『彼』の裸体を見て

思わず赤面してしまったのは
私の方で。


結局すぐに
電気を消してしまっていた。