ちいさい頃から
たくさんのオトナに
幻滅して
自分の運命を
呪ってきたけれど
それでも
生きるコトに執着したのは
私の存在があったからだと
ミスターは断言する。
『彼』はホテル王の元で
生活を強要されたときも
「自分を一番高く
買ってくれるヒトの
トコロにいくんだ。
何の躊躇がある?」
そう笑ったという。
それは幼かった私が
幼かった『彼』に
全く違う意味で
語ったコトバで
そんな重みのある決断に
引用されるなんて
夢にも思わなかったけれど。
間抜けな私のコトバが
存在が
『彼』の過酷な人生の
支えであり続けていたのは
確かに事実で…。
「おにぎり、勿体ないよ」
「…そうだな。
鳩よりおまえのが
美味そうに食うもんな」
「どういう意味かな、それ…」
「それ以上の意味はない」
表情ひとつ変えず
『彼』は答える。
「…いつもそんな仏頂面してて
楽しいとか
おもしろいとか
そういう感情ってないの?」
「……」
「私といても楽しくないなら
一緒にいる意味なんて
ないと思…!」
『彼』はおしゃべりな
私の口を自分の唇で塞いだ。
窓ガラスにカラダを
押しつけるようにして
私の制服をまた
剥ぎ取ってゆく。
「…やだ。
隣りのビルから丸見え…」
「見せてやればいいよ。
キレイなカラダなんだから」
「って、ちょ、ちょっと…あ!」
ベランダの
ちいさいテーブルの上で
私は『彼』のご馳走にされる。