「鳩は平和のシンボルみたいに
言われてるけど

鋭い爪もクチバシもない分
一撃で勝敗が決まらないから

ケンカを始めると

弱った相手を
いつまでも執拗に
突き続けるんだよね」


博学なユッキが
教えてくれた。


快感という餌につられて
ノコノコと
自分でやってくる私は

まさにバカな鳩そのもので


その残酷な体質までもが
類似しているようで


痛かった。


情欲の果て

私達は何を見たんだろう。

何を求めていたのだろう。


「鳩がどうして
平和のシンボルって
言われるようになったか
知ってる?」


ユッキが続ける。


「ノアの方舟の話に
出てくるんだけど。

放った鳩がオリーブの葉を
咥えて戻ってきて

ノアは洪水が
おさまったコトを知るの」


「希望」という
いい知らせを届けてくれた
ノアの鳩。


幼なかった『彼』は

鳩達が
いつか自分にも
オリーブの葉を運んできて
くれるのではないのかと

そんな希望を持って
空を見ていたのかもしれない。


私に再会できる日を信じて
疑わなかった『彼』。


最期の最期まで
希望を失わなかったよね。


幼い我が子の手を引きながら
空を自由に舞う鳩を
見かける度に

そんな『彼』のコトを
思い出して。


「まるまる太って
ウマそうな鳩だよな〜」

「公園の鳩は
食べ物じゃありません!」

「え〜〜〜ッ」


『彼』とよく似た
漆黒の瞳を持つ我が子に

私は今日も苦笑する。





情欲の果てに

≪〜完〜≫


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