恍惚と絶頂の連弾
いつものように
いつものティーラウンジで
『彼』と待ち合わせていた。
慣れとはコワいモノで
世界中の人口の9%しかいない
セレブだけを
顧客にしているという
この超高級ホテルの中でも
ほんの一握りのヒトしか
利用できない
ティーラウンジを
当たり前のように
使っている自分がいる。
もう今では何も言わなくても
当たり前のように
大好きなハーブティーと
セサミ味のクッキーが
運ばれてきて。
『彼』が来る前に
食べ終わってしまったら
宝石箱のように
たくさんのショコラが入った
BOXが運ばれてきて。
どれにしようか
楽しみながら悩んでいると
『彼』が遅れて
やってくるというのが
いつものパターンで。
特別階専用の
エレベーターに
ふたりで乗り込みながら
私は宝石箱の中から
ショコラを選んでは
自分の口に運んでいた。
今日も私に背中をむけたまま
黙り込んでいる『彼』。
ショコラでも
口に運んでいないと
気づまりするから。
こんな私達を見て
誰がカラダのカンケイが
あるなんて
想像できるだろうか。
同じ学校の制服を
着ていなければ
どう見たって
たまたまエレベーターを
乗り合わせたふたりって
カンジで。
他人行儀で。
なのに
ホテルの部屋に入ると
『彼』の態度が一変するのだ。
「ねえ。どうして
ホテルの部屋の中以外では
キスひとつ
求めてこないの?」
「……」
『彼』は私の問いかけを
無視して
するすると
私のカラダから
衣を剥いでいく。
やるコトは大胆なのに
妙なトコロで
道徳観が顔を覗かせていて。
『彼』のその振れ幅の
おおきさや矛盾が
その頃の私には
理解出来ずにいた。