ひとりベッドの上で
取り残された私は

唖然とするばかりで。


電話には必ず出るコト。

それが『彼』が
このホテルの部屋を
利用する条件のひとつに
なっていたなんて
知らなかったから

父親にでも
呼び出されて
慌てて言い訳しに
行ったのかも

なんて

悠長な想像をしては
ひとり大ウケ
していたのだが。


シャワーを浴びて
帰る身支度を始める。

「あ」

『彼』はカードキーを
持たずに出て行ったけど

どうすればいいんだろう。


帰れとも
待ってろとも
言われなかったんだけど

すぐ帰ってくる
つもりなのかな。


「…だったら
待ってなきゃ
機嫌悪くしちゃうよね」


フロントにカギを預けて
帰ればよかったんだけど

何か理由をつけて
そこにいたかったのも
事実で。


豪華な部屋。


いつもゆっくりと
味わうコトも
できなかった
夢のような空間。


『彼』を気にするコトなく
ゆったりとくつろいでみる。


「……」

こんな豪華な部屋で
『彼』は何をして
時間を過ごしているんだろう。


「テレビゲームとか
隠してたりして♪」

お金持ちなんだから
ソフトだってすごい
揃っているのかも

なんて

考えたわたしがバカだった。


ゲーム機どころか
私物らしきモノが
ほとんどなくて。

「洋服とか
どうしてるんだろ?」

使い捨てだったりして。


教科書、ノート。

学校で使うモノしか
揃ってない。


でも笑ったのが
体操着。

プロのクリーニング職人の
最高の技術で
キレイに仕上げられた
それは

まるでブランドの服のように
美しくたたまれていて。


「やりすぎもよくないと
思うけどな〜」

ツッコミドコロ満載で
何だか楽しくなって
きてしまった。


…でも
「絵の道具とか、ないんだ…」