明るい場所で
『彼』が私を求めてきたのは
それが最初で
最後だったのだけど


私は『彼』のカラダの
あちこちに

新しいアザをつくって
帰ってきていたコトに

たいして気にも
留めないでいて。

だいたい
キスマークなんてモノを
見たのは

それが
初めてだったから

どこかにぶつけたのかな
くらいの認識で。


老人の嗜好のまま
『彼』は”義務”を終えて
戻ってきたのだなんて

想像もつかなかった。


『彼』は私のカラダを
けっして傷つけたり
汚したりはしないヒトで。

その愛し方は

老人のそれとは
違うんだって

母親のそれとは
異なる行為なのだって

無意識のうちに
自己主張していたのかも
しれない。


私のカラダが鍵盤に触れる。
ピアノの不協和音が

私をより昂ぶらせた。


「…私、こんなコトするのを
待ってたワケじゃ…」

この期におよんでも
まだ私は言い訳を
しようとしていて


「わかってるよ」

『彼』がめずらしく即答した。


「自分の為に誰かが
明かりをつけて
待ってるなんて」

求める方が
おかしいんだって

自分に言い聞かせるように。


『彼』はまた私を求めた。


ピアノだけでなく
あらゆる教養を学ぶべく

一流の教師を
ホテル王と呼ばれる
その老人から与えられて

育ってきたって
知ったのは

『彼』が亡くなって
何年も経った後で。


自分の趣味の時間など
持つコトも許されない

豪華な籠の中の鳥。


何でも手に入るけど

本当に欲しいモノは
どれも手には
入られなかった。


見返りを求めなかった
『彼』の愛


今も私のココロの奥で


そっと
眠っている。





恍惚と絶頂の連弾

≪〜完〜≫


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