衝撃の夏〜甘くて危険な夜
従兄が海外に1ヶ月間
仕事で家を空けるからと
その間の留守を頼まれた。
憧れの都会のど真ん中にある
高級マンションでの
夏休み限定のひとり暮らし。
東京の予備校の
1ヶ月集中夏期講習を
受講するという名目での上京。
もちろん
17歳の貴重な夏休みを
そんなモノで
消費する気なんか
全くなくって。
東京に転校していた友達と
連絡をとって
夜遊びの計画だって
ばっちりで。
「絶対、東京の
カッコいいオトコノコ
掴まえるんだから〜♪」
期待に胸を
ふくらませていたのに。
まさか上京1日目から
こんな目に逢うなんて
私ってばよっぽど
神様のウケが悪いんだなと
今日ほど自覚したコトはない。
目の前には
ナイフを持った少年。
オトナっぽく見えるけど
歳は私と同じくらいだろうか。
でも
どこか水商売っぽく
見えるのは
長めに左右に流した前髪から
受ける印象なのか。
それとも
おおきく開いたシャツの
胸元からのぞく
素肌のせいなのか。
色黒の肌。
目だけがやたら
光って見えて
このヒトが持っていると
ただの果物ナイフが
とてつもなく
切れそうに感じる。
「何、見てんだよ…」
ううん。
ナイフよりも
さっきからときどき
こっちに向けてくる視線のが
数百倍も恐かった。