わかっていたけど


なんだか切なかった。


メールの着信音がして
現実に引き戻される。


「今日、合コンの約束
してたんだっけ」


何かそんな気分じゃない。


憧れの東京。

カッコイイ彼氏を
掴まえるのが
目標だったのに


変われば変わるもんだ。


「とりあえずは
断っておこう。

風邪ひいちゃってとか
適当に打っとこう」


友達とのメールの
やりとりに夢中で

シャワーを浴びて
少年Aが出てきてたコトに
私は全く気付かなかった。


「誰とメールしてんの?」


厳しい顔で
少年Aが私の手元を
睨んでる。


「あ、友達と。
今日、約束あったから」

「…ふ〜ん」


ふ〜んって。

「私が外と連絡
取ってるのって
怪しい行為だとか
ふつう思わない!?」


私はもう自分のモノで
そんなコトはしないって
思いあがって
いるんだろうか。


「…べつに。

逃げようと思ったら
今だって
逃げるチャンスだらけ
だったのに

逃げなかったじゃん?」


そう言われれば
そうなんだけど。


少年Aは玄関から
新聞を持ってきて

自分の記事が出てないか
チェックしているようで。


私との将来より

そっちの方が
気になるのも当然で。


現実的だった。


「えッ!?」

少年Aが突然声を上げる。

「…俺、花瓶なんか知らない」