なんて

祈るように呟いたのに。


そんな空気を
切り裂くように

少年Aのケータイが
けたたましく鳴り響いた。


「アネキ!?」


それはお姉さんからの
国際電話で。


少年Aの身元なんて
警察の手で
簡単に割れていて。


少年Aは電話口で
言い訳ひとつせず


「…ごめん」

そうただひたすら
謝ってばかりで。


初めて涙をみせた。


何の話をしているのか
電話の向こう

お姉さんが
ずっと何かを諭してるようで


少年Aは電話を
切ろうともせずに

ただひたすら

頷いていた。


犯人ではないかも
しれないのに。


でもそれを実証するには
たくさんの時間が
きっと必要で。


お姉さんはきっと
この結婚を破棄して
式もあげずに
帰ってくるんだろうなって

想像はできた。


頑固なお姉さんっぽいから
説得しても
無駄なんだって
少年Aもわかってるから

余計に哀しくて


切なかった。


この結婚式の為にと
急いだばっかりに

悪い世界に足を踏み入れて


こんなコトになって。


何の為の形見の真珠
だったのか。


ケータイの電池が切れて
ようやく電話が終わって。


「…今から出頭するよ。

世話かけたな」


なんて


着替えだす
その背中がすごく
ちいさく見えた。