「朝食くらい
食べっていってよね」

「…ん」


とはいっても

目玉焼きくらいしか
できないけれど。


「飲み物は?」

「ココアがいいな」


なんて
オコチャマな。


「だってさ。
ムショに入ったら
そういうの
飲めなくなるじゃん」

「…ばっかじゃないの!」


まだ殺したんだって
決まったワケでもないのに

もう抵抗する気力も
なくなってて。


お姉さんの人生を
自分が台無しに
してしまったって

自分を責めずには
いられないのは
わかるけど。


「アナタのお姉さんって

これくらいのコトで
人生、滅茶苦茶にされる程
ヤワな苦労知らずなワケ!?」


こんなバカを女手ひとつで
育てるなんて
並大抵の苦労じゃなかったと
思うよ。


「こんなつまづきくらいで
人生投げてたら

何の為にお姉さんが
ここまで頑張ってきたのか
わからないじゃない!!」


そもそも突き飛ばして
しまったのだって
ただの過失で

事故だったんじゃないの!


言ってやりたいコトなら
山ほどあったのに。


口から出るのは
どれもコトバ足らずの
キツイセリフで。


涙だけが
どんどん溢れて


止まらない。


なのに

こんなときに限って
玄関チャイムが鳴って。


私達は現実に
引き戻された。


「新聞の集金か何かかな…」

不用意に玄関を
開けようとして

少年Aに止められる。


「…おかしいと思わないか?」