「バカになんかしてないよ!

ただ未遂で終わってたんなら
報道なんかされないし。

ほら、世の中ぶっそうで
事件だらけだもん。

ちいさな事件や事故なんか
いちいち報道されないよ」


うわああああ。

わかっていても
動揺を隠そうと
私の口は止まらないよ〜〜。


少年Aが俯いたまま
黙っているモノだから
なおさら私をパニックさせる。


「…事故とかだったら
報道されないの、か?」


「えッ?」

「…いや、その」

…未遂なの?


「…そいつのアタマを
打ちつけたのは俺なんだけど。

その後、そいつはちゃんと
意識を取り戻したんだよ」


「じゃ、全然逃げ回る必要
ないじゃない!!」

思いっきり安堵した。


のに。

「その後、そいつから
電話がかかってきて。

電話の途中で
そいつが突然倒れて」


アタマのぶつけドコロが
悪くって

アタマの中で出血でも
してたんじゃなかったのかって

オトコは眉をひそめた。


「電話が途中で
切れたからって

死んだとは限らないんじゃ…」


「そいつが倒れた現場に
居合わせたオトコが
その後電話に出てさ。

息がないって…言ってって。

事故扱いとかになってる
可能性なんか

それでもあるモノなのかな」


「さあ…」

倒れている被害者を見て
警察が事故だと
判断したのかどうかって
コトなんだろうけど。

ヒトを殺したコトには
変わらないんだよね…。


ふたりの間に
嫌な沈黙。


少年Aが深い溜息を
ついたかと思ったら

ニュース番組が
スナックの女性経営者の
殺人事件を報じ始めた。


食い入るように
テレビを睨むその少年Aの
様子から

その殺人事件の犯人が
少年Aだと
すぐに直感する。