その日のテレビや
翌日の新聞は
重要参考人の少年の
身柄を確保したコトを
一斉に報じていたけれど。
その後、少年が
どういう処遇を受けたかなんて
教えてくれる
ヒトはいなくって。
あれは
リアルな夢だったのかなと
思えるくらい
今、私の周りは
静かで
とても静かで。
そうして
ひと夏も終わって
私もこのマンションから
家に戻る日がやってきた。
このマンションを出て行って
しまったら
あの想い出は
本当に夢になって
しまいそうで。
私はまだ
未練たらしくも
少年Aのコトばかりを
考えている。
忘れなきゃ。
もう二度と
逢えないヒトなんだから
忘れなきゃ。
そう必死で
自分に言い聞かせていたのに。
「よお!」
なんて
私のコトを
マンションのエントランスで
待ち構えている
そのヒトを見て
泣いてしまった。